病院坂って、自分的には金田一耕助最後の事件と言う印象の作品で余り心に
残っていませんでした。
最近、この作品のテーマ曲を聴く機会があったのですが凄く心に響くものがあり
一度っきりしか観ていなかった本作品を数十年ぶりに観たのですが最後の弥生と
三之介のシーンでは不甲斐無く泣かされました。
最初に観た時は、十代で今いちストーリーが解かり辛く感情移入ができなかった
のですが50近くなった今ではやはり観た印象がまったく異なりましたねぇ。
原作もその頃、映画を観た後読んだのですがこれまた映画より更に難解で今回を
機にもう一度じっくり読み直してみようと思う。
確かに、ビジュアル的には他の金田一ものに比べると地味かもしれませんが
内容の奥深さでは一番じゃないでしょうか。
運命に翻弄される一人の女の人生の哀しい愛の物語に彩られた本作品を、原作の
膨大な情報量をできるだけコンパクトに纏め上げ、豪華演技派キャストで仕上げた
市川昆監督の手腕に只々脱帽でした。
本アルバムも正確に言うと、実際の劇中で使用した劇伴ではないのですが
映画音楽としての聴き易さではこちらに軍配が上がります。
劇伴は、シーンに合わせた演奏なので一曲の音楽としての完成系ではなく
あくまでも素材の一つである為、一般観賞として聴くには辛いものがありマニア
向きでの色合いが濃くなるからです。
金田一ものや病院坂〜マニアから言えば、劇伴も喉から手が出るほど入手したいアイテム
なんでしょうが...。
楽曲を担当している田辺氏も犬神家〜の大野雄二氏と同じくジャズ畑の出身だそうで、凄く
音楽感覚が近い様に感じました。
基本的に、病院坂〜テーマと怒れる海賊〜の2曲のバリエーションで構成されていますが
哀愁に満ちた楽曲と、アップテンポなジャズ楽曲がそれぞれ主張しながらも喧嘩する
事無く、自然に混在しているのが凄い。
病院坂〜テーマに惚れ込んだ自分にとって、これだけのバリエーションで聴かさせて貰って
お腹一杯で超満足。
桜田淳子氏の大人の魅力が垣間見える、ヴォーカル曲も彼女の歌唱力も相まってお勧めの一曲。
最近の映画のサントラ楽曲って印象に余り残らないのですが、昔はどの映画の楽曲もクオリティ
が高く耳に残る曲が多いんですよねぇ。
98'完全盤(廃盤)と同じ内容で、しかも最新リマスタリングがとても嬉しいですね。
金田一ものは、作品的に日本特有の土着的なオドろオドろしい印象が強いのですが音楽は叙情的な
曲が多く凄く心に響きます。
映画音楽と言うジャンルに囚われず、一つの音楽作品としても非常にクオリティの高い楽曲が多い事
に気づかされます。
今回の病院坂〜のテーマ曲と大野氏の犬神家〜の愛のテーマの2曲は、金田一音楽ものでは
金字塔でしょう。
こう言ったサントラ物は、何時廃盤になってもおかしくないジャンルですので入手できる時に
確実に手に入れて置きましょう。
特に、再販物や復刻盤は要注意。
映画サントラ好きだけでなく、インスト音楽が好きな方にも超お勧め。3